第二回放送も来年持ち越し決定みたいなので、昔書いたエッセイを最近とあるところに投稿するために書き直したので、掲載しちゃいます!

tiger_komatsu19692007-12-23



Donald Fagen/The Nightflyによせて

 中学生になり丁度洋楽漁りに専念していた頃このアルバムに出会った。内容については全く知らなかっが、僕にどうしてもこれを買わせたい気にさせたのは、そのあまりにステキなジャケットだった。写真のタバコを指に挟んだ渋いオジさんは、その頃の僕の憧れの職業、ラジオDJだった。机の上には、ターンテーブル、ジャズサックスのレコード、マイク、そしてタバコ、灰皿、マッチ。壁には時計と何やら横文字いっぱいの紙が挟んであるバインダーがかかっている。時刻は4時9分5秒、午前か午後か。タバコの銘柄は何だろう、あの紙には何が書いてあるのだろうと、いろいろ想いを巡らせてはこの写真に僕は見とれていた。自分には全く無いこの写真の「大人」な感じに、完璧にやられてしまった。
 このレコードに始めて針を落とした時の事は覚えていない。やはりまだ渋すぎてそれほど感動はしなかったのだろう。しかし、弁当箱の様なウォ―クマンとお気に入りの音楽を録音したテープを持って出かけるときは、必ずこのアルバムをしのばせた。僕のカセットを見た大学生ぐらいのお兄さんお姉さん達に「これいいよねー!」なんて言われるものだから。いってみれば、このアルバムは自分を少し大人な気分にさせてくる絶好のアクセサリーだった。
 この作品が発売された1982年はCDが市場に出回った年で発売と同時にプレーヤーも新機種が続々と登場した。ただ、考えられないほど高額だった為、今みたいに身近になるとは考えてもみなかったが。当時僕は買えもしないCDプレーヤーの新製品誌面レポートで試聴CDによくこの作品が使われているのを発見すると何故か誇らしかった。 
 あらためてジャケットをまじまじと見ると、4時9分5秒にというのはこの写真の時計は左半分切れているので右半分にきれいに3本の針を写すための構図上の意図ではなかろうかと気づく。巡らす思いも擦れたものだ。写真の男は何も変わっていないのに。